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父が後に原稿を見せてくれたので、少し覚えていることがあります。
私は編み物をするのですが、当時、男性物(石田純一さんがモデルをしていた)の本に載っていたセーターを自分用にサイズ調整して編んでいました。
しかし失敗してどう見ても男性物の巨大なセーターになってしまい、「いらないから」と父に押し付けたのです。
いらないからあげただけのセーター。父のために編んだわけでもなかったのに、父は喜んで着ていました。
「娘が編んでくれたセーターを…」
原稿にあったこの一節が記憶に残っています。
父は私のことを壇上で話してくれたのですね。どんなことを話したのだろう。
いま私は娘にセーターを編むことがありますが、父が元気なうちにたくさん編んであげたらよかったと思うと、じわじわと目が濡れてきてしまいます。
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